フッ酸はどれくらい危険か 岩石の化学分析で使用する薬品類の中ではフッ酸(フッ化水素酸)が一番危険である.以下の被害例はワシが院生だった頃に見聞きしたもの.
例1:分析実験中に誤ってフッ酸の原液(約50%HF)の飛沫が手についたのに気付かずに帰宅した.就寝中にジクジクとした痛みで目が覚め,痛みはだんだんと強くなり,ついには転げ回って涙がボロボロと出る程になった.近所の救急病院へ駆け込み,フッ酸が付いたらしいと話すと,手がグローブになるくらい中和剤を注射され,結果的に大事にはいたらなかった.
例2:白金ルツボに岩石粉末を入れて加熱分解している時に,誤って親指を高温のフッ酸蒸気にさらしてしまった.例1と同じように,深夜になって我慢できない痛みに襲われ,救急病院へ駆け込んだ.中和剤を打たれたが時既に遅し.親指の付け根から細胞が壊死してしまい,肉をとる手術を受け,親指の骨が剥き出しになった.
フッ酸を扱う際の注意点をまとめる.
1)フッ酸を扱う時は必ずプラスチック手袋を着用しなければならない.実験用の薄い使い捨て手袋より炊事用の厚手の手袋がお薦め.
2)フッ酸が皮膚に付いても,直ぐには何の症状も現れない.フッ酸を扱った後には身体の異変に注意すべし.
3)原液より蒸気の方が始末におえない.フッ酸蒸気は分子量が軽いので風上にも飛ぶ.出来るだけドラフトチャンバーの奥の方で作業すべし.
4)5%くらいに薄めたフッ酸なら,ちょっとくらい手についても大丈夫.むしろ危険なのは,岩石と反応して発生するフッ化珪素(SiF4)である.これは,無色無臭の気体で,吸っても短期間の内には何の症状も現さないが,長期間吸い続けると肺ガンの原因になるとされている.面倒がらずに防毒マスクを着用すべし.